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風化させてはいけない


今年で戦後60年。戦争経験者は次々と亡くなっていき伝えられるものが少なくなおり、この国から戦争の記憶というものは風化しつつある。しかし、碑などの戦争があったことを示すものは多く残っており、辛うじて戦争というもの断片に触れることが出来る。自分は東京に住んでいるため、戦争の断片に触れることができる。

戦時中、被害がひどかった地域として沖縄や広島、長崎に並んで東京があげられると思う。自分は幸運にも東京の下町付近に住んでおるため、戦争があったことを知ることが出来る。例えば、ある橋に行けば空襲により死体で川が埋まったことを知ることが出来る。東京はちょっと注意深く歩けば、そういったものが実に多く散在しているのだ。言い換えれば、現在の東京は戦争の上に再建されている。

体験者の高齢化が進み、彼らから直接聞くことは難しくなっている。軍事関係のものの殆どは取り壊されるなどして見ることは出来なくなっている。しかし、戦争があったことを示す碑は朽ちることなく静かに立っており、いまだに花が添えられているのを見ることが出来る。このことから、戦争は完全には終わっていなく、戦争が全く関係のないことではないと言える。まだまだ風化させてはいけない。

(2005-08-15)
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風化させてはいけない 桜田晶 2005-08-15