この日が来るのは分かっていたはずだった。
来ないほうがおかしかったはずだったんだ。
僕は今まで最も望んだものを手に入れたことがない。
どんなに努力しても叶わず、どんなに犠牲を払っても報われることはなかった。
だから、当たり前のことのはずだったんだ。
その話が出たとき、頭の中は白くなり、鼓動は早くなり、背筋に気持ち悪い感触が走った。
それは実際に起こっていることを受け入れることが出来ず、
でもその場を壊すことも出来ず、ただおどけていることしか出来なかった。
僕が出来たこと、
「平静でいるように見せること」
ただそれだけだった。
それから一人になってとぼとぼ歩き、
涙を拭おうとしてハンカチを出し、
それを一目見て、ポケットにしまった。
どうしても、そのハンカチではぬぐえなかった。
今までいい夢を見ていた。
それが元に戻るだけ。
ただそれだけのこと。
それだけのことだったんだ。
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